2023年11月04日
雪山北峰−1:素密達山屋〜穆南営地
【写真説明】三日目のスタートは、ムトロツプ(穆特勒布)山頂上を迂回し、同山と雲達卡山の鞍部となる通称穆南営地(露営サイト)へのトラバースである。既に先行する投稿記事で記したように、「地獄のトラバース」なのだが、只闇雲に稜線との出会いを目指し奮闘したイメージしか残っていない。筆者の脳裏に焼き付いていた地獄とは即ち登りの難儀さだったのだが、そんなイメージで当時撮影した写真を眺めていても繋がりが悪い。それで他のハイカーの記録を覗きながら漸く当時の登攀の概略が朧気に想像出来るようになった。今回は二枚の俯瞰図を掲載したが、二枚とも地獄のトラバースを説明するには不都合だ。そこで三枚目の俯瞰図をここに埋め込んだ。赤線の部分は現時点では空く迄筆者自身の推定でありこのように上下大いにスウィングするのは大袈裟かもしれない。実は台湾人ハイカーの言う「地獄」とは登りではなく下りであることが判って来た。すると自身で撮影したトラバース時の写真の並びが格段に良くなった。最上段写真は、O線行三日目、最終目標雪山北峰の朝。二段目左写真は、山屋から樹林帯の中の最初の登りの最高点付近、ここから急下降、ここが地獄の始まりだ。中央写真はその地獄を俯瞰したもの。右写真はその地獄の底近くから地獄の下りを仰ぎ見る。最下段左写真は地獄の底となるガレ場、ここから再び登り返し、稜線上のランドマークである穆南営地(露営地)を目指す。中央写真は、その露営地脇に立つ玉山圓柏。右写真は稜線到達後撮影したムトロツプ山山塊、同写真右奥に写るのは品田山。(続く)
2023年11月25日
雪山北峰−2:雲達卡山
【写真説明】「地獄のトラバース」から脱出した後は三日目の目的地である雪山北峰まで特に強烈な印象を受けた箇所も無く、最期は雪山北峰を後にして雪北山屋に投宿した。雪北山屋から西側方面の夕陽に依る大舞台は圧巻、当時は恐らく筆者の人生に於いて最早これ以上の夕陽に遭いまみえることはあるまいと思っていたのではないか?そんな気持ちを滲みさせようと悪戦苦闘した写真は次回の投稿に掲載予定だが、今回の投稿に掲載する写真を選ぶ最中気付いた―即ち実際現地を歩いている時は特別な意識と注意は払われなかったと云う意味―のは、筆者は単なる通過点としてしか見ていなかった三千メートル峰だが無名峰のウンダカ(雲達卡)山が実は聖稜線上ではそれなりの存在感があることである。三日目のスミダ山屋から雪北山屋間の行程に於ける前半のハイライトが地獄のトラバースであり、後半のハイライトがウンダカ山山頂から南北に延びる稜線と言えるかもしれない。
上段左写真はウンダカ山山頂と思しき地点に置かれたマーキング。中央写真は同山頂から北側の眺望。写真中央部を占めるのはムトロツプ山山塊、写真左端奥のドーム状の山塊は大覇尖山、ムトロツプ山の東隣は品田山、写真右端奥には桃山が写り込んでいる。右写真はウンダカ山山頂付近から南側の眺望、即ち雪山北峰の北側の断崖部、実際双方の断崖部は相対峙しているのを今回の投稿に際し初めて理解した次第。下段左写真はウンダカ山頂上を含むウンダカ山大断崖、雪山北峰方面からの眺望。中央写真は、聖稜線と雪山北峰の分岐。右写真はその分岐から雪山北峰山頂迄最後の一段、僅かに五分程度の歩行である。総じて、三日目の行程、スミダ山屋―雪北山屋間の標準歩行時間は4時間とされているが、我々の場合、休息・食事も含め約7時間を費やした。(続く)
2023年12月16日
雪山北峰−3:三角点
2024年01月06日
雪山北峰−4:玉山圓柏
【写真説明】明けましておめでとうございます。今年も本ブログをご贔屓頂けるようお願い申し上げます。日本に引き上げて来た後も継続して台湾百岳に関する記事を発信し続けているが、今年年内に既登分全座を全てカバー出来るかどうかは判らないが、終りは近い。その後をどのようなコンテンツで継続していくか?は未だに結論が出ていない。静かに思案中。
メルマガ『台湾の声』に対する台湾古道補遺シリーズの一つとして投稿した「氷河時代の「生き残り」―ニイタカトドマツ」の中で、今回の投稿のハイライトである玉山圓柏については「ニイタカビャクシン:台湾名『玉山(ぎょくさん)圓柏(えんぱく)』、別名『香(こう)青(せい)』、マツ科ヒノキ属」と云うサブタイトルで詳述した積りではいたのだが、台湾内の著名な分布区域としてここ雪北山屋が完全に抜けていた。元々筆者の予備知識としてのリスト上になかったと云う単純な理由だ。古道ブログの方に筆者の新刊書紹介の目的で玉山圓柏の説明をそのまま抜粋してあるのでご参照願いたい。
当時大量に撮影した写真を以下の三グループに取捨選択してみた。即ち、第1グループ(上段):百岳(中央北一段南湖大山連峰、品田山等、雪山北峰)をバックにした群生、第2グループ(中段):雪北山屋周辺の群生、中央写真奥はムトロツプ山(左)とスミダ山(右)、第3グループ(下段):「競演」。(続く)
2024年01月27日
雪山北峰−5:夕陽と朝陽
【写真説明】雪北山屋に草鞋を脱いだ夕刻撮影したのが左・中央写真、右写真はその翌朝の朝陽。恐らく筆者の登山史上最高の陽の出入りの瞬間では無かったろうか。。。各々の撮影方向は言わずもがななのだが、もう少し詳しい説明を加える:
ダイヤグラム上に三点の丸印があるが、真ん中の丸印が雪山北峰、右側(東側)丸印が中央尖山主峰、左側(西側)丸印が鹿場大山(楽山レーダー基地、標高2,618b)、これら三点は東西各々20`の直線距離で偶然一列に並んだ。何故鹿場大山を西側俯瞰のポイントに選んだかと言うと、東側稜線上で筆者が認識出来るピークが無いことであるが、その視界内の恐らく大部分を占める加里山(同2,220b)山脈の最高峰が鹿場大山であること、その頂上の構造物が肉眼で認識出来ること、特に煌々とした夜間照明が強烈で、もう何処の山域からこの照明を初めて目撃したかは忘れたが、真っ黒い天空に浮かぶレーダー基地の照明はその高度故不思議な雰囲気を醸し出していた。但し、これら二枚の写真に写り込んだ山々の中に楽山があるかどうか?はもう撮影時から十年経つので情けないことに筆者には判らない。右写真はお馴染みの中央山脈北一段稜線。(続く)