2021年03月13日

閂山−1

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【写真説明】左写真は730林道の実質的な起点である清泉橋。同写真左下に「九人坐」の文字と携帯電話番号があるが、登山客目当ての広告である。台湾では「接駁車」と呼んでいるが、要は白タクである。この林道は悪路であることが示唆されているのだが、実際酷いものだった。この橋より1`程入り込むと、既に廃棄された環山検査哨(林務局検問所)があり、一泊目の露営地とした。中央写真は検査哨全景、正式な林道起点。右写真は検査哨内部。

閂山へのアクセス口である730林道は台7甲線(旧省道7号甲線)(中部横貫公路宜蘭支線)沿いの環山部落南側に起点がありそこから東、中央山脈方面に延びている。同部落は台中市和平区平等里に属する。同区は台中市最大面積の区であるが同時に人口最小の区でもある。タイヤル族居住地でもある。平等里は北から思源、武陵、環山を主要地域として構成される。思源の宜蘭県側は思源(ピアナン)埡口と呼ばれる中央山脈と雪山山脈の鞍部である。南湖大山、中央尖山に代表される中央山脈北一段への登山口として著名だ。武陵は国軍退除役官兵輔導委員会の公有事業である三大高山農場の一つ、武陵農場で名高い。同農場は同時に雪山山脈の核心部、「聖稜線」への登山口でもある。環山部落は、文字通り四面を山岳に囲まれているから付けられた地名である。タイヤル語のローマ字表記はSqoyaw。旧名は志佳陽(シカヨウ)社。同部落をベースにして雪山山脈の百岳一座、志佳陽大山への登山は日帰り可能だ。実は、閂山登攀を試みる以前に志佳陽山に登攀する機会があった。単攻には成功したが真っ暗闇の中の帰還となり、しかも翌日は屏風山への登攀が控えていたので、環山部落内を散策する機会無し。これは閂山登攀時も同じ、下山後に足を伸ばす時間無し。詰り、環山部落がどの様な成りをしていたかについては極めて印象に乏しい。残念である。(続く)


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2021年03月27日

閂山−2

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写真説明】既に紹介したように730林道の全長は28`、手元の地図帳に依ると自動車が入り込めるのは11.7`地点まで、その先凡そ12`地点に木製の柵(同地図帳に「柵欄」の標記有り)が完全に徒歩のみの進入を命じている。閂山への登山口が23.2`地点なので、僅かに10`強歩けば言い訳だ。前日から雨が降っていたので、11.7`地点に至るまでの後半部分は四駆でもタイヤがスリップし悪戦苦闘した。当時の山行の中でも印象的な一段となった。右写真は駐車地点であり、撮影した写真の時間データを見ると、11.7`地点まで車で到達した模様だ。(続く)
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2021年04月10日

閂山−3

【写真説明】実質的な中央山脈北二段の登山口となる730林道約12`地点から閂山登山口までの約13`の間の古林道美を当時撮影した中からランダムに選び時系列順に9枚並べた。林道というビジネス目的の人工物が自然に回帰していく様が感じ取られる。(続く)
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2021年04月24日

閂山−4

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【写真説明】駐車地点から閂山登山口までの約13`区間の歩行標準時間が4時間強、落差は約500b、その間を休憩を含め5時間半程度掛けた。その登山口(標高2,835b)に先ず露営の準備をして約2時間弱を要する閂山頂上を目指した。但し、下山後直ぐに撤収し25`工寮まで夜道を辿っている。その理由はもう思い出せない。730林道は登山口近くになると茅に覆われてしまう。この状態は登山道も暫くは同じだが、出発してから15分後には台湾高山特有の玉山箭竹の草原に切り替わり(左写真)、最初の池塘、同時に気象ステーションに出食わす。その後は緩やかで登り降りを繰り返し(中央写真)、出発から1時間15分後に頂上稜線が見えて来る(右写真左奥山塊)。天気さえ良ければ素晴らしい山行が約束されていたのはここに掲載した写真で自明なのだが、雨に降られはしなかったのは幸運とは言え、上述した緩やかな登り降りは実に退屈で苦しく印象の乏しい攻頂と相成った。(続く)
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2021年05月08日

閂山−5

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【写真説明】左写真は出発から丁度2時間後に撮影、ここから最後の登りに掛かり約20分後に登頂している。中央写真は頂上の点景。右写真は陸測二等三角点。登頂した時は既に霧中にあったと云う記憶だったのだが、写真を繰ってみるとまだ僅かに眺望は残っていたのが判る。(続く)
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2021年05月22日

閂山−6

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【写真説明】この山行で登頂以外で期待していたことは730林道25`地点の林務局工寮(作業場兼宿泊所)である。どういう経緯で興味を持ったのかは忘れてしまったが、前身が日本時代の駐在所ではと睨んでいたかもしれない。筆者の閂山登頂が2014年5月、当時工寮の中にテントを張ったという記憶がないので、まだまだ断熱シートの上に寝袋で眠れるぐらいには荒廃が激しくはなかったと思う。今現在は撤去されたという噂も耳にしたので、ネットで公開されている今年に入ってからの山行記録を閲覧してみると、工寮そのものはまだ建っているが、最早宿泊には耐えられずにハイカーはその約500b手前の林道脇に露営するのが一般的のようだ。そのような山行記録は必ずこの工寮の写真を恰も歴史建築並みの扱いで掲載している。筆者も同意するものである。730林道の荒廃そのものが自然回帰への過程である。(続く)
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2021年06月05日

閂山−7

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【写真説明】ここに掲げた三枚の写真は野生のツツジである。何れも730林道脇で撮影されたものであるが、左・中央写真は歩行に切り替える以前の地点で撮影、両写真同群生である。右写真群生と同種であるかどうかは自信が無い。閂山、鳴鈴山界隈は台湾固有種のツツジの一種、細葉杜鵑(志佳陽杜鵑)の群生で著名なはずである。以上は後知恵で、カメラを向けていた時分は、記録として撮影したと云うのが正直な所だ。日本では伝統的にツツジ、サツキ、シャクナゲは区別して呼称するが、台湾ではこれらツツジ目ツツジ科ツツジ属の種は杜鵑花で統一されている。学術上は、鳥類のホトトギスは杜鵑、植物のツツジ属は杜鵑花と表記し区別している。杜鵑(漢文読みだと「とけん」)は、古蜀(春秋戦国時代末期の一国、後の三国時代の蜀と区別する為にこう表記する)の杜宇(望帝)が死後ホトトギスに転生した故事に由来する。ホトトギスがツツジ属の呼称に転じたのは、白居易(白楽天)の代表作の一つ「琵琶行」の中で謡われた「杜鵑啼血猿哀鳴」の一句が背景にある。その後、「杜鵑啼血」の熟語は極度の悲嘆の譬えと成る。ホトトギスの望帝は蜀が秦に滅ぼされたのを目撃し悲憤慷慨の余り吐血する。ホトトギスの鳴声(「テッペンカケタカ」が聞きなしの代表例)と口腔内が赤いことからの連想だ。同時に、この熟語は杜鵑がツツジ属の花々に転用されるようになった由来も暗示している。ツツジ属花弁の代表的な色合いである白地に鮮紅色の取り合わせが吐血の飛沫のイメージと重なるからである。

さて、細葉杜鵑、又は志佳陽杜鵑の和名は何であろうか?これを探すのには随分苦労した。台湾サイトで提供されている学名を日本語エンジンで検索すると行き当たった。「イサオツツジ」がその回答なのだが、意味不明。参考までに二つの学名を並べるが、両者同種である:

*細葉杜鵑:Rhododendron noriakianumi Suzuki
*志佳陽杜鵑:Rhododendron sikayodaisanense Masamune

複数の台湾植物学学徒が出て来る。日本語サイトでの検索は難しいので台湾資料『臺灣近代植物學的發展』に依った。筆者の推定では以下の通りである:「のりあき」=福山伯明;「すずき」=鈴木時夫(学名中にTのイニシャル有り);「まさむね」=正宗嚴敬。結論として日本人の名前と思しき「イサオ」の出所不明。尚、「シカヨウ大山」は即ち志佳陽大山、このカテゴリーの最初の投稿で説明済みである。(終り)

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