2024年03月09日

雪山主峰−1:凱蘭特崑山(カランタツクン山)

tm-776.jpg tm-777.jpg tm-778.jpg
【写真説明】左写真は聖稜線南端を終結させる稜線、同写真最奥の最高点は北稜角、その左側のホタテ貝状の地形は雪山主峰を含む第1号圏谷(カール)。中央写真は、同稜線を更に南に辿り北稜角が擁する第2号圏谷に近接した時点で撮影。手前二つのピークが右側から凱蘭特崑山北峰と凱蘭特崑山。右写真は凱蘭特崑山頂上を超え全貌を顕わした北稜角と第2号圏谷。

雪山北峰を越して聖稜線を終結させる迄に乗り越えなければならない百岳は最早皆無だ。この間、三千メートル越えのマイルストーンはカランタツクン(佐々木舜一に依る。凱蘭特崑山、3,706b)と北稜角(3,8680b)のみ。北稜角と雪山主峰は南北に向き合う。この間の稜線の状態を『臺灣山岳』の中で佐々木は次の様に描写する:

午後一時四十五分遂に稜線の展望絶佳な處に到著した。右にカランタツクンを仰ぎ、左に稜線を經て次高の主山を望見する。此處からはもう遠くはない。カランタツクンの西側は遠くで見た様に丸で斷崖だ。タラガユンもムトロツプも斷崖で、直ちに大甲溪に直立して居る。此の稜線から大小萬別の無數の山々が手に取る様に見える。稜線の上は殆んど砂岩の瓦礫で、之に「にひたかびやくしん」、「にひたかしやくなげ」が蟠生して居る。殖産局一隊の好意によつて漸く通れる程に此の難路を拓いて呉れて居るのも嬉しい。灌木帯の間、間はゲレルである、右なるは西に、左なるは東に流れて居る。此處に高山植物が散生して居る。空は晴れて高く、此分なれば今日は終日雨は降りそうもない。

此稜線に横はる大山、小岳はバボー・カランタツクンの次から次高山北峰前迄九箇の起伏がある。遠くから見れば如何にも行きよささうだが、行ってみればそんな優しいものでは決してない。道は灌木林の欝生で足の踏み場ない位だ。字で書けば行路困難で、登りは大した事もないが、下りは殆ど全部が斷崖である。


タラガユンは品田山、ムトロツプは穆特勒布山、ゲレルは登山関連ドイツ語と想像したが俄かには判じ難い。意味不明。もう一つ意味不明の箇所は「バボー・カランタツクンの次から次高山北峰前迄九箇の起伏」の部分。佐々木パーティーも筆者と同じく聖稜線を北側から辿り雪山を目指している。するとこの部分は二つの解釈が可能だ:

(A) カランタツクン山(南)と雪山北峰(北)の間の稜線には九箇所のピークがある
(B) カランタツクン山(北)と雪山北稜角(南)の間の稜線には九箇所のピークがある

パーティーの行く手にはカランタツクン山、北稜角、雪山主峰があるので、既に過ぎにし雪山北峰を振り返りながら、ピークの数を数えるのは不自然な気がする。実は当時(戦前)、現在の北稜角は北峰と呼ばれていたことを考慮すると、(B)の解釈が妥当だと考えられる。但し、北峰-カランタツクン山-北稜角の距離を比べてみると北峰-カランタツクン山の方が圧倒的に長いと云う矛盾もある。最後の部分「下りは殆ど全部が斷崖である」とは、北稜角に至る稜線の様子ではなく、そこから雪山主峰を目指し断崖を大いに下降するルートを指しているようにも思える。いずれにしても追って追記する予定だ。(続く)
posted by 玉山 at 00:00| 台北 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 雪山主峰(第2座:3,886m) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック