2022年03月26日

俯瞰図:南湖大山南峰

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前回の南湖大山東峰の紹介を以て、愈々このブログのタイトルである「聖稜線」に入る予定であったが、近々で南湖大山南峰まで辿る機会があった。筆者自身の最新の台湾百岳登攀記録である。この時期に自己の公的・私的双方のスケジュールに対し非常な無理を押してこの山行を入れ込んだのは、健康上の事由からの焦りである。四月に入ってしまうと、高山シャクナゲの開花を堪能出来るが、梅雨を控え台湾の天候は不安定になるので、どうしても出来るだけ早くの敢行が必要だと踏んだのだ。何故南湖大山を選んだからと言うと、未踏の南峰、巴巴山(百岳32号、3,448b)は、筆者の現在の体力で、余裕を持って南湖山屋をベースにして日帰り往復が可能と判断したからだ。

結果は散々だった。一つは天候である。入山から下山迄の丸五日間、雨に降られた。加えて猛烈な風である。この間、南湖大山群峰、中央尖山を代表する中央山脈北一段の山容を垣間見ることすら出来ない冷たい灰色の世界だった。唯一の救いは、シャクナゲの開花を目の当たり出来たことだ。シャクナゲに雨も風も関係無い。入山三日目、その雨と風を押して南峰のみの登攀を目指した。南峰の南稜線上の巴巴山迄足を延ばすことは端から放棄した。台湾人ガイドの勇断に非常に感謝するものである。もう一つは高山病の発症だ。筆者は高山病には耐性があると思い込んでいたのだが、この自信は今回の山行で大いにへし折られてしまった。僅かな登り勾配に身体が敏感に反応し猛烈に気分が悪くなる。持病の亢進、その薬の副作用、慢性的な鬱病に依る睡眠不足等々色々原因は思い浮かぶが、要は筆者の体力は高山登山は限界に近着きつつあるということだろう。

南湖大山南峰は奇怪な尖峰である。2013年山行時のパノラマ写真を埋め込んだ。南湖大山主峰から中央尖山へ至る稜線上の真ん中付近の突起がそれだ。台湾ハイカーの間では「沈黙の巨人」と云う呼称があることを下山後に知った。沈黙とは、無基点峰の為自ずから登山家を招くことはしないし、そうそう容易に登攀はさせないない山容を擁していると云う意味だろうか?南湖大山主峰と南峰の標高差は250b程あるので、大概のハイカーは主峰頂上、又はその登頂途中から南峰を俯瞰することになる。すると南峰を取り巻く巨石群とそこから起立する南峰の垂直感を感得するのは難しい。筆者自身は前回2013年の山行の際、南峰も散々撮影していたのだが、巨石群の存在と南峰の高度感、垂直感は全く理解していなかった。逆に言うと、今回現場に至ったにも拘わらず、天候のせいでこれら二つながら霧中(夢中)の出来事になってしまった。そういう悔悟を込めて今回の俯瞰図を起こした。南湖主峰と南峰の稜線は台中市(西側)と花蓮県(東側)の境界を定めているが、実際の登山道はこの境界より東側を辿り南峰に取り付く。(終り)
posted by 玉山 at 10:02| 台北 ☔| Comment(0) | 百岳俯瞰図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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