2012年05月12日
「台湾百岳」について−8:『台灣山岳』
【写真説明:写真はクリックして拡大】タイヤル族の聖山、大覇尖山(28号、3,492メートル)とその稜線を池有山(48号、3,303メートル)山頂下から望む。大覇尖山は今現在は山頂への登山は危険な為禁じられているはず。1927年(昭和2年)、台湾山岳会会長、沼井鐵太郎一行が「人類」として初登、「人類」とはタイヤル族は聖山を汚していないという意味だと思う。以前にも書いたと思うが、沼井はこのブログの副題でもある「聖稜線」の名付け親。
現時点では隔月刊の『台湾山岳』は台湾唯一の山岳専門雑誌である。創刊が1994年、最新刊は2012年4・5月号であり、創刊号から数えて第101号目である。雑誌の内容の質は当然台湾国内の登山事情を反映する。台湾近代登山史は沼井を始めとする日本人により形成されてきたが、特に高山への登山は日本人にのみ門戸が開かれており、その最たる象徴が、沼井の大覇尖山登頂の前年に設立した台湾山岳会である。
従って、台湾人に依る台湾登山史は戦後にスタートする。1947年に現在の中華民国山岳会の前身である台湾省山岳会が成立、その間228事件の余波で、日本人に拠り蓄積されてきた台湾山岳に関する資料の殆どが散逸してしまう。爾来約65年。。。
雑誌マーケットに投入するに耐えられない写真が毎号散見されるが、中身は見ごたえがある。ハイカー、山岳家のみならず、台湾の歴史に興味がある方には毎号目から鱗物の記事、写真が積め込まれてくる。その点がこの雑誌のユニークさであろう。「山を歩けば台湾が見えてくる」の意である。そこで、メルマガ『台湾の声』に投稿した。2010年3月16日に掲載された全文は以下の通りである。
件名:「台湾の声」【読者便り】「台湾山岳」・台湾唯一の山岳雑誌
【読者便り】「台湾山岳」・台湾唯一の山岳雑誌
「台湾の声」編集部殿;
発売が先月から始まっていますので少し遅くなりましたが、「台湾の声」読者に紹介していただければと思いメールしました。
「台湾山岳」は台湾唯一の山岳雑誌(隔月刊)です。台湾には九州本土程度の面積の中に三千メートル峰が250余座ひしめいていますので、雑誌名からその内容は硬派向けの印象を持つかもしれませんが、実際は登山に縁のない方にも十分興味を持ってもらえるように毎号工夫されています。以前は台湾百岳に登らずして百岳を堪能する方法とか、珍しいのでは台湾石仏巡りとか特集が組まれたことがあります。
最新刊である今年の二・三月号の特集は「六十処史蹟風雲排行[木旁]」、この「史蹟」の殆どが日本時代に因むもので、人文歴史、石碑、砲台、神社、古橋、遺跡、伝統集落、産業の八分野で併せて六十箇所が選定されており、その内16箇所には更に詳細な解説がふんだんに写真を加えて施されています。日本語でお目に掛かる台湾の日本時代案内書よりもはるかに広範囲にカバーされている上に、あくまで台湾人が選定した日本時代の歴史遺産という視点がユニークな点です。価格は200台湾ドル。
私は過去相当気を配ってそういう日本時代のものを探してきたつもりでしたが、こんな所にこんなものが!という驚きの連続でした。台湾内の最寄りの書店で毎号購読可能ですし、下のサイトにアクセスすれば、最新刊であればその殆どの記事内容の要約を閲覧できます。是非台湾の書店で手に取って見てください。
「台湾山岳」サイト→http://www.twmount.com.tw/ (終り)
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