【写真説明】左写真は高雄空港を離陸し水平飛行に移った後デジカメで撮影。今は国内線、国際線共にデジカメの機内での撮影は禁止されている。どうしても撮影したかったらフライト・アテンダントの目を盗むしかない。北大武山は高雄市の丁度東に位置する。従って、この写真は朝方撮影されたもの。写真下段、明るく光るのは高雄県と屏東県の境を流れる高屏渓。中央が北大武山、その右が南大武山（2,841メートル）、左が霧頭山（2,736メートル）である。右写真は、高雄市内の文化中心の建物越しに浮かぶ右から北大武山、霧頭山、井歩山（2,066メートル）である。
高雄市で何処に住みたいかと聞かれれば私は即座に答える...「北大武山が見える所。」
北大武山は高雄と屏東の間に広がる高屏平野の東のはずれからいきなり立ち上がる。従って、高雄市と北大武山の間には遮るものが無いので、天気に恵まれれば高雄市からでも実によく見える。但し、見えるかどうかは両者の間の水蒸気の量に左右されるから、通常は朝か夕方、水蒸気量が若干落ちる秋から冬場の方が見える確率が高いということになろうが、一概にそうとも言えない。実際は一年を通じて見えない日の方が多いと経験的に思う。
現在は、高速3号線が屏東市を抜けて台湾海峡に面する林辺まで延び、更に高雄市からは省道88号線が快速道路として潮州で高速3号線と繋がった。快速道路と称されていても実際は高速道路である。これらの道路は一般道より高いところを走るので高屏平野の実に広々とした地形が簡便に看て取れるようになった。運が良ければ眼前に北大武山が大きく立ちはだかる。平野部の都市と山岳との関係を考えた時、屏東市は日本の松本市と似ているのではないかと考えたことがあるが、北大武山は余りにも大きく迫り出し過ぎている。台湾に松本を探した場合、台中市が一番近いかもしれない。
私は以前、嘗ては高雄市で一番大きな都会公園であった文化中心の横のアパートの11階に住んでいた。文化中心の講堂の屋根とその向かい側の国立高雄師範大学の建物が少しばかり邪魔していたが、北大武山を盟主とする中央山脈最南端の稜線を見通すことが出来た。一番美しい稜線は、南大武山から北上する山並みで、北大武山、霧頭山、井歩山（2,066メートル）、大母母山（2,424メートル）は名前は判らなくてもよく目立つ山々である。井歩山は高雄市から見ると富士山の形に見える。
北大武山は台湾最南部の百岳であり、台湾五嶽の一つである。台湾百岳はその荒々しさ、険しさ、位置等を勘案し複数の山岳に対する呼称が与えられている。五嶽とは台湾で最も荒々しい山という意味であろう。標高順に、玉山、雪山、秀姑巒山、南湖大山、北大武山を指すが、この内玉山、雪山、南湖大山は各々複数の峰が百岳に勘定されている。又、北大武山はパイワン族、ルカイ族の聖山でもある。
高雄市から眺めていても北大武山の五嶽たる由縁は感得できるが、南大武山と北大武山との間の稜線が緩やかに見え、容易に短時間で縦走出来そうに錯覚してしまう。この二つの山岳の間は実際は大きく切れ落ちている。しかも、高雄市からだと実際の頂上より南側の稜線が標高が高いように見える。日本時代に盛んに描かれた台湾の絵地図の中の北大武山は高雄市から北側に辿る高雄県美濃辺りから見た山容ではなかろうかと考えている。ここからだと更に五嶽と呼ばれるに相応しい山容を展望出来る。このように看る角度が変わるとそれに連れ山容が大きく変化するのを楽しむのも妙味がある。（＞次回に続く）
この山、山容は目立ちます。但し、この山に登ろうとすると大変な目に遭います。もう二度と登りたく山の一つです。登山道中の倒木がひどい！（了）